InvenSenseの6軸コンボセンサー。XYZ軸の加速度センサーと3軸ジャイロのコンボ。特殊な空洞のある「Cavity SOI」で製作される
インテル:半導体・MEMS市場の行方:TSMCとの格差(動画):
Intel: Whereabouts of semiconductor/MEMS market: Disparity with TSMC:
英特尔:半导体/ MEMS市场行踪:与台积电的差距
ー東北大 田中教授が解説ー
東北大 田中教授:
半導体・MEMS市場の行方を東北大 田中教授が解説した。
田中教授はイベントで、「インテルとTSMCの製造技術の差は、開くばかり」だと述べた。
半導体業界の“王者”インテルと、最大手の半導体受託工場であるTSMC。
両者の現在地とは?
- 半導体・MEMSの最新動向から、
- 国内製造業復活への提言まで、
- 田中氏の講演内容を要約する。
A.「王者」インテルの焦り
ーTSMCとの技術力の差は歴然ー
インテルの苦悩:
半導体メーカーの王者として、長く君臨してきたインテル。
インテルは、IDM(Integrated Device Manufacturer)に位置づけられ、半導体の全工程を自社で一貫して行っている。
しかしインテルは近年、苦しい状況に追い込まれている。
- 2016年以降、10nmプロセスの歩留まり問題でCPU供給に手間とった。
- さらには、メモリの値段が暴落する「メモリ不況」まで引き起こした。
- 2020年、NVIDIAの時価総額がインテルを超えたと報道された。
NVIDIAの台頭:
NVIDIAは、「AIで注目される汎用GPUのファブレスメーカー」として知られる。
fablessとは、生産工場を所有しない製造業のこと。
クアルコム・ブロードコム・アップルらも、実はファブレス半導体メーカーだ。
インテル、未だ7nmプロセス:
インテルは、これまで半導体製造の「微細化」で他社をリードしてきた。
しかし、現在7nmプロセスの立上げで、大変苦労している。
TSMCは、3nmプロセスで先行:
TSMCは、3nmプロセスのCPU生産を、2022年に開始予定。
製造技術の格差は、大きく開くばかり。
一般に、プロセスは細かいほど、消費電力を下げられる。
製造技術力の差は、微細化技術だけではない。
TSMCのチップレット技術:
サーバ向けCPUでは、マイクロチップで構成せず、複数の機能部に分けて製造する。
- インターポーザ(貫通電極で表裏回路を導通させる基板)上に、並べて製造。
- チップレット技術と云うこの手法が、新アプローチとして注目。
インテルは、このチップレット技術でも、TSMCの後塵を拝している。
このまま差が広がると、インテルは最先端の半導体プロセスの研究開発を諦めることになるかもしれない。
B.米国政府の焦燥感
-TSMCの工場を誘致して、半導体製造に注力-
米国政府は、この状況に強い危機感を覚えている。
「最先端半導体プロセスの研究開発は、いったん止めてしまうと後から再開できない」という。
将来、米国は「半導体を設計できても、半導体自体を製造できない国になるリスク」がある。
米国 にTSMCを誘致:
- 焦った米国政府は、アリゾナ州に台湾・TSMCの工場を誘致する。
- 2024年から5nmプロセスの最新ラインで製造開始の予定。
しかし、「2024年製造ライン開始のころには、TSMCの3nmプロセスが主流」の見込み。
米国の工場は、「その時点で、すでに最先端とは言えなくなる」のだ。
台湾政府の目論見:
台湾政府は、小さなTSMCの工場を、米国にプレゼントする。
「それで、安全保障上と外交上の優遇を米国政府から引き出せる」のだ。
ファブレスモデルの落とし穴:
米国は「ファブレスモデルの大成功によって、大きな落とし穴に嵌った」というわけ。
「半導体製造を軽視して、放棄したツケ」が、米国に回ってきました。
- それは現物資本集約的で、
- それは泥くさくて、
- それは小回りが利かない、
半導体製造技術の重要性を軽視したのです。
米国半導体製造技術の凋落:
しかし、米国では
「物理的なモノづくりよりも、コンピュータ上での楽な仕事が、持てはやされてきたこと」は否めません。
米国著名大学の研究でも、設計分野が長い間重視されてきました。
「インテルが、5nmプロセスを、満足に立ち上げられなかった」のは、「米国の半導体製造技術の未成熟さ」が、大きく反映されています。
「米国の優秀な学生たちが、半導体製造分野を敬遠したこと」が挙げられます。
台湾半導体製造レベルがダントツ:
一方、台湾では
「最も優秀な台湾の若者は、TSMCに就職する」のは、周知の事実。
また、
「台湾半導体製造工場の微細加工施設は、最もDXが進んだ職場の1つ」です。
つまり今、この半導体製造技術が、台湾を救っている状況と言える。
C.MEMSのファブレスモデル
-「製造プロセス」が重要な鍵-
ファブレスモデル形態の1つでもある「MEMS」(Micro Electro Mechanical Systems)
- 機械要素部品や、
- センサー、
- アクチュエータ、
- 電子回路など、
「MEMS」は、1つのシリコン基板やラス基板に集積化する。
そこでも、現場の製造プロセスは重要な役割を担う。
半導体の設計技術と製造技術:
これらはクルマの両輪であり、片輪で走れる距離は長くありません。
現場の製造に即した、微細加工技術の不断の向上が重要になるのは、言うまでもない。
ファブレスMEMSの成功例:
ファブレスMEMSで最も有名な成功例は、米国のInvenSenseだ。
- 2003年創業のInvenSenseは、驚異的なスピードで急成長。
- 2011年NY市場でIPO後、
- TDKが、2016年1,500億円で買収した。
InvenSenseのMEMSセンサー:
このMEMSウェハーは、以下の点が従来の手法と異なると言う。
- ASICウェハーを接合し、
- MEMSとASICを電気的に接合しつつ、
- 同時にMEMSをウェアレベルで、パッケージングする
InvenSense製品の優秀性:
また、「3軸加速度センサーとジャイロセンサーを、同時に作ること」が出来る。
つまり、6軸コンボセンサーが非常に小さくなる。
ゲーム機やスマートフォンで、InvenSenseの製品が受け入れられた。
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