中国の半導体装置:露光プロセスの技術レベル
Semiconductor Equipment in China: Technology Level of Exposure Process
中國半導體設備:曝光工藝技術水平
ー日本のDUV露光装置の輸出規制ー
ー中国がArFi液浸露光を実現ー
遠藤誉・エキスパート掲載記事からサマリーをお届けします。
露光プロセスのレベル:
中国が、半導体製造の中で最も弱いのは、リソグラフィ技術を中心とした露光装置だ。
露光プロセスとは:
半導体は小さなチップに非常に細かい配線が描かれている。
配線パターンを「光照射」で、作ることを露光プロセスと呼ぶ。
日本の輸出規制開始:
日本は、7月23日半導体輸出規制を実行した。
まさに露光装置・プロセスを中心としたものだ。
ASMLの中国向け輸出:
世界の主な半導体メーカーの80%以上が、ASMLの顧客だ。
中国への輸出は、世界全体の15%を占めている。
従来、中国とASMLの仲は非常に良かった。
アメリカの対中制裁:
米国は、中国への半導体装置輸出に新たな規制をオランダに求めた。
ASMLは不本意ながら、アメリカに同調せざるを得ない立場に追い込まれた。
現在、世界市場の34.7%を占める。
ASMLのビジネス拠点:
2020年江蘇省無錫市ハイテクパークに、独自のビジネス拠点を設立した。
ASMLは、中国向けDUV(深紫外線)露光装置を、独自開発した。
これを中国本土に投入する計画を立てていた。
米国とオランダ政府:
2023年6月、オランダは「9月1日から輸出管理法を実行すること」を決定。
今回の規制対象は、少数のハイエンドDUVとEUV露光装置に限定。
ASMLは、「中国専用バージョンを中国で発売できる可能性」を残している。
中国は、「ASMLも、アメリカの被害者なのだ」と憤っている。
光源5世代のヒストリー:
光源5世代の歴史から、中国の開発レベルを分析した。
g線:1980年代に使われた波長の長いタイプ
i線:1990年代に使われた波長のやや短いタイプ
KrF:1990年代後半のクリプトン・フッ素レーザー光
ArF:フッ化アルゴンによるレーザー光線
EUV:5世代の中で最新バージョンだ
中国の光源開発:
中国は、4代目半のArFiに相当した光源を開発することに成功した。
中国科学院・長春光機所と、ハルビン工業大学が12wのDDP-EUVの開発に成功。
このArFiの「i」は「immersion(浸潤)」の意味である。
対物レンズの開発:
露光装置の構成要素の中で、光学系が大きな要素の一つ。
ASMLの対物レンズ:
ASMLは、ドイツのツァイス社のレンズを独占使用。
日本の対物レンズ:
キヤノンやニコンは、自社レンズを持っている。光学メーカーとして有利だ。
中国の対物レンズ:
「長春奥普光電技術股分有限公司」が90nmを開発した。
「長春光機所」が32nmのEUVレンズを開発中。
しかし、ツァイス社との格差は大きい。
デュアル・ウェハー・ステージ・システム:
1台の露光装置内で、同時に2つのウェハーを扱える、
露光と計測を同時に行うシステムのこと。
中国語では「双工台」と書く。
中国の「双工台」:
清華大学と華卓精科)が、10nm(移動精度)を実現した。
ちなみに、ASMLは2nmまで実現している。
液浸露光システムのレベル:
波長の短い光源を使った液浸露光システムを開発した。
たどり着いたのが「ArF液浸露光」と「EUV露光」だ。
ArF液浸露光とは:
光源として波長193nmの「ArF光源」を用いる。
この技術で、10ナノ世代の加工精度でパターンを形成できる。
浙江啓爾機電:
中国の「浙江啓爾機電」が、「ArFi液浸露光の実現」に成功した。
ASMLは、EUV露光で中国の先を行く。
中国はパワー半導体で勝負:
アメリカは、ハイエンド半導体製造での対中制裁を強化した。
一方中国は、線幅の大きいミドルクラス半導体製造にシフトする。
更に、パワー半導体製造を強化するのだ。
中国のパワー半導体:
2020年、中国のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)の自給率は、20%だった。
2024年、自給率は40%に達すると予測されている。
アメリカの制裁の有効性:
既に中国は、宇宙開発でもアメリカを凌駕した。
アメリカの対中制裁外交には、「賞味期限」があるのだ。
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/6a65579cd968bf1688062a18f07c0d2e0d6262c1