中国の財政:都市別の債務比率ランキングが判明
China’s finances: Debt ratio rankings by city revealed
中國財政:各城市負債率排名揭曉
ー’公式債務’は35兆元(5兆ドル、700兆円)
ー’隠れ債務’は56兆元(8兆ドル、1100兆円)
ー中国205都市で、87都市がレッドライン越えに
NHK放映記事からSummaryをお届けします。
中国不動産の経営危機:
「恒大グループ」や「碧桂園」など、相次いで経営危機に陥った。
地方政府の債務リスク:
中国経済が失速し、’長期低迷を招く財政破綻リスク’が隠されていた。
それは1800兆円を超える地方政府の債務だ。
NHK取材班が、中国地方政府の財政破綻状況を解明した。
(NHKスペシャル :中国経済失速の真実 より)
貴州省が返済不能事態:
今年2月、中国貴州省政府が、緊急声明を発表した。
貴州省の債務問題を緊急に解決すべきだ。
しかし、貴州省単独では解決できない。
貴州省の貧困脱却政策:
貴州省は、中国の中でも貧しい地域の一つ。
2000年以降、貧困脱却を目指し、中央政府が開発を進めた。
20年間で、GDPが年10%を超える成長を遂げた。
’特殊な投資会社’の存在:
何故、返済不能事態に陥ってしまったのか?
貴州省は、’借金で道路や橋などインフラ開発’を推進した。
’地方融資平台’を設立:
しかし、インフラ開発財源には限りがある。
そこで地方政府が出資して作ったのが、融資平台(=特殊な投資会社)だ。
中国地方政府の資金調達ルール:
中国の地方政府は、’地方債以外での資金調達’は、原則禁止されている。
しかし、地方政府は禁止ルールを回避。実は、融資平台で資金を集めた。
地方政府が、銀行融資で資金を集め、インフラ開発を推進した。
融資平台のスキーム:
現在、中国全土の地方政府が、融資平台を利用している。
融資平台は、中国全土に1万以上ある。
しかし、最近は開発収益が上がらない。資金繰り悪化の融資平台が相次ぐ。
貴州省の融資平台:
貴州省の融資平台では、銀行からの融資返済が困難になった。
返済を20年間繰り延べると公表した融資平台もある。
融資平台の資金繰り悪化:
融資平台の資金繰りが悪化すれば、地方政府が影響を受ける。
中国の公式統計のトリック:
中国地方政府の債務には、’融資平台の債務が含まれていない’のだ。
実際は、’地方政府が、返済に関して独自に保証する’と、看做されている。
だから、融資平台の債務は地方政府の’隠れ債務’なのだ。
中国地方政府の債務は、どれくらいか?
IMF(国際通貨基金)が試算した。
公式債務は35兆元:5兆ドル、700兆円
隠れ債務は56兆元:8兆ドル、1100兆円
債務合計は91兆円:13兆ドル、1800兆円
地方政府に対するインパクト:
この金額が、地方政府に及ぼすインパクト?
現在、地方政府の個別債務データは、開示されていない。
融資平台の債務データの入手方法は?
融資平台の債務データを入手:
NHKは、中国のシンクタンクや研究者、専門家を訪問取材した。
中国民間企業が、’データベースを保有していること’を知った。
地方政府ごとの「債務比率」:
地方政府ごとの「債務比率」を調べた。
債務比率とは、地方政府収入に占める債務残高の割合のこと。
これで財政悪化状況が詳細にわかる。
債務比率のランキング調査:
中国31省や直轄市のうち、
1.債務比率が最も悪い・ワースト10と、
2.債務比率が最も良い・ベスト10を、図示する。
ワースト1位は沿岸部の天津:
’債務比率が悪い地方政府’は、中部・西部の内陸に集中する。
沿岸部と内陸部では、地方政府の収入に大きな差がある。
中国沿岸部に位置する広東省:
IT産業で発展を遂げた深センがある。
債務総額は全国6位だが、地方政府収入が多い。
実は、債務比率にすると全国28位なのだ。
貴州省はワースト4位:
一方、内陸に位置する貴州省は、ワースト4位。
債務総額は55兆円。債務比率にして667%に上る。
貴州省債務比率の推移:
貴州省の債務比率は、2021年から22年に急速に悪化。
多くの地方政府の収入も、21年から22年に急減した。
なぜ、債務比率が急速に悪化したのか?
大きな要因は、地方政府が依存した’土地収入の減少’だ。
不動産会社の業績悪化:
中国では、国が土地を所有している。
地方政府は、’土地使用権を不動産会社に売り、売却収入でインフラ開発財源を賄う’
しかし、不動産会社の業績悪化で、土地使用権の売却収入が落ち込んだ。
不動産業界に依存する地方政府にとって、大きな痛手だ。
財政悪化の警戒ライン=80以上の都市:
中央政府は、地方政府の財政悪化に、危機感を募らせている。
中国国務院が緊急対応:
’地方政府の債務リスクに対する緊急対応計画’という文書を発表。
地方政府は、’債務が危機的状況にある場合は、財政再建計画を提出せよ’とした。
中国都市レベルでの警戒ライン:
その基準について、「債務の利息支払いが、政府支出の10%を超える場合」となっている。
この基準は財政破綻につながりかねない、“財政悪化の警戒ライン”のだ。
どの都市が警戒ラインを超えているのか?
アメリカのシンクタンク:ロディウムグループ
中国の債務問題分析の専門家、ローガン・ライト氏に協力を依頼した。
利息の支払額のデータの提供を受け、分析を試みた。
レッドラインを超えた87都市:
分析対象の利息の支払い額に、「隠れ債務」の利息も含まれている。
’データが利用できる中国205都市’を対象に、分析した。
’財政再建を必要とするレッドラインを超えている’のは、
’中国205都市のうち、87都市にのぼること’が判明した。
ローガン・ライト氏は、’最悪のシナリオも想定する必要がある’と警告する。
中国地方政府の財政悪化:
近年、世界の研究者が指摘し続けている。
しかし、特に’隠れ債務の詳細実態に関するデータ’は未公開だ。
NHKのデータ分析で、’地方政府の危機的状況’が判明した。
’中国と経済的つながりの強い日本’にとって、他人事ではない。
NHKは、今後も中国経済動向を取材していく。
(11月5日「NHKスペシャル」で放送)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231115/k10014256361000.html