TSMC:300mmウエハーの在庫不足:SUMCO、信越化学(動画):
TSMC: Insufficient stock of 300mm wafers: SUMCO, Shin-Etsu Chemical:
台积电:300mm晶圆库存不足:SUMCO,信越化学
ー半導体揺るがすもう一つの影ー
台湾TSMCから増産要求:
- 台湾TSMCの在庫がどんどん減っている。
- 早く増産投資してくれないか
2021年2月以降、SUMCOに対し台湾積体電路製造(TSMC)から、生産増強の要求が日増しに強まっている。
主に、「先端品製造に使う直径300mmタイプのシリコンウエハーの逼迫感」が強まっているからだ。
SUMCOの推計:
世界半導体メーカーは平均で、2020年初頭に300mmウエハー在庫を1.6カ月分保有していた。
一方で、足元2月は1.3カ月分まで減少した。
SUMCO:橋本真幸CEO
300mmウエハーの供給:
ーCPUや機器制御ロジック半導体向けー
300mmウエハーの供給が、需要に追いつかない状況になっている。
2023年には1割不足:
特にスマホ向け300mmウエハー需要は、4Gから5Gへの置き換えが進む。
2o24年には2o20年比で3割増える見通しだ。
ウエハー・メーカーの体制:
今年、ウエハー・メーカーが、需要見合いの投資をしなければ、2023年に300mmの月間需要750万枚に対し、1~2割不足する。
TSMCやインテルの焦燥感:
「このままでは、近い将来ウエハーが手に入らない」
TSMCやインテルなど半導体大手は、焦燥感に駆られ始めた。
ウエハー工場の建設から安定量産に入るまでには、2年ほどかかる。
今年にも建設に着手しなければ、2年後には半導体の材料不足に陥りかねない。
SUMCOの増産体制:
一方、SUMCOは落ち着き払っている。
橋本CEOは「値上げが通る見込みがなければ、工場の新設をしない」と断言する。
理由は2つ:
1つの理由:「シリコンサイクル」に踊った過去の呪縛だ。
2008年のリーマン・ショックで需要が急減し、SUMCOは過大設備を抱え、大幅な赤字に陥った。
安易な投資に動かない理由はここにある。
橋本CEO:
「300mmウエハー価格が60%上がらないと、損益分岐点を超えない」と試算する。
- ウエハー供給側の力が強いうちに、
- ウエハー価格の値上げを勝ち取り、
- SUMCOの収益が着実に上がる、
その、めどがついてから投資する考えだ。
市場関係者によれば、信越化学工業も値上げ交渉を進めているもようだ。
日本が、世界シェアの55%占有している。
日本は、ウエハー技術力に対し、圧倒的な自信があるのだ。
2つ目の理由:
英オムディアのレポート:
世界のウエハー市場シェア55%を、首位の信越と2位のSUMCOが占める。
- 最先端製品ほど、2社の寡占傾向は鮮明になる。
- 半導体性能は、回路線幅に左右される。
- しかし、最先端5ナノ材料を量産できる会社は、現時点でこの2社だけだ。
グローバルウェーハズ:
3位の台湾・環球晶円(グローバルウェーハズ)も、技術力で日本勢に追いつけない。
現在、3位の台湾・環球晶円 は、4位の独シルトロニックを買収手続き中だ。
- ウエハーは半導体品質に直結
- ウエハーは半導体の品質に直結する。
TSMCは、「先端品開発では、SUMCOと信越をパートナーに選ばざるを得ない状況」なのだ。
SUMCOと信越:
「世界中のウエハー・メーカーが2社に追いつく」には、多くの時間がかかる。
だから、SUMCOと信越は、度重なる増産要請に対し、強気の態度を続けられるのだ。
2社の高度技術開発力:
半導体不足のかげで、露見し始めたウエハー不足。
「2社の投資判断が、半導体業界の命運を握る」といっても過言ではない。
それは
- 圧倒的な技術を磨き続ければ、
- やみくもに投資し、シェアを追わなくても、
- プレゼンスを発揮できることを示唆している。
日経ビジネス電子版