USスチール:工場閉鎖・移転が眼前に
US Steel: Factory closure and relocation imminent
美國鋼鐵公司:工廠關閉/搬遷迫在眉睫
・バイデンの決定、買収拒絶でUSSは再建不能
・買収失敗なら、中国の天下で米国敗北へ
勝又壽良のワールドビュー掲載記事からSummaryをお届けします
バイデン米政権が買収阻止:
バイデン米政権は1月3日、日本製鉄によるUSスチール買収阻止を決めた。
USスチールは、これによって経営再建が難しくなるとみられる。
1月3日の米株式市場:
USスチールの株価は一時8%安となった。
1.USスチールは、買収不成立で製鉄所閉鎖や本社移転が現実味を帯びる。
2.バイデン大統領の判断間違いが、これからクローズアップされる局面を迎える。
日本経済新聞:1月4日
USスチールの製鉄所閉鎖や本社移転が現実となった。
両社は「法的権利を守るため、あらゆる措置を講じていく」。
USスチールが日鉄と共同声明:
日鉄による買収阻止が決まった3日、日鉄と共同声明を出した。
USスチールは日鉄と協調し、一貫して買収の正当性を訴えてきた。
USスチール従業員が抗議集会:
買収を支持する従業員は本社や工場で度々集会を開いた。
1.買収が不成立なら追加投資はなくなり、地域経済や雇用に多大な影響を与える。
2.買収失敗なら中国の脅威に対抗できず、「米国は敗北する」と強い口調で訴えた。
USスチールの決算悪化:
USスチールが、単独再建できる余地は限られる。
1.12月19日、10〜12月期最終損益が、4四半期ぶり赤字の見通しを発表。
2.自動車向け鋼材需要低迷や価格下落に加え、電炉工場立ち上げ費用が重荷だ。
デビッド・ブリット:(CEO)
買収が不成立なら、ペンシルベニア州モンバレー製鉄所閉鎖や本社移転が避けられない。
1.仮に米政府への提訴を決めた場合も、結論が出るまで時間がかかる。
2.USスチールにとって、日鉄との合併が、唯一の救済策であった。
バイデン大統領は、こういう事情を知らず、間違った判断をくだした。
米クリーブランド・クリフスの野望:
USスチール入札で、米クリフスは日鉄に競り負けたが、USスチールを買収したい。
クリフスとUSスチール合併の場合:
米国の高炉や自動車鋼板の生産で100%近いシェアとなり、競争法の観点で実現性が薄い。
1.米クリーブランド・クリフスは、24年にカナダの鉄鋼大手買収を決めた。
2.クリフスの投資余力は少なく、24年7〜9月期2億4200万ドルの最終赤字だった。
USスチールは没落の一途:
2023年の粗鋼生産量は、1500万トンで、日鉄の3分の1だ。
世界ランキングは、23年に24位と10年前の13位から低下した。
1.米国政府は、関税など保護主義政策で雇用や生産を守る。
2.USスチールは、すでに過去の名声だけで生きている企業だ。
中国の粗鋼生産は世界一:
2023年、米国の粗鋼生産量は8140万トンで世界3位。
1.1980年以降、国別の粗鋼生産量でに日本、90年代に中国に抜かれた。
2.2000年以降、中国が独走状態で、世界の5割を占める。
日鉄の買収提案は、こうした中国の脅威に対抗するためだ。
USスチールのブリットCEO:
1月3日、「買収阻止は中国の共産党指導部が喜ぶだけだ」と声明を出した。
1.USスチールは「安全保障の面で他国との協力は不可欠」と強調してきた。
2.米鉄鋼業衰退は、政府の保護政策によって合理化投資を怠ってきた帰結だ。
今回のバイデン大統領による「合併阻止」は、米鉄鋼業を破綻させる「最後の一撃」に他ならない。
電炉プロジェクト「ビッグ・リバー」」の行方:
今後の焦点は、USスチール子会社の電炉プロジェクト「ビッグ・リバー」だ。
南部アーカンソー州で、二酸化炭素の排出量が少ない電磁鋼板を生産する。
1.日鉄は、「電炉のみの単独買収も視野に入れる可能性」がある。
2.USスチール電炉工場は、労働組合に加盟しておらず、反発が少ない。
日鉄は米国事業の拡大に向け、環境負荷の少ない電炉投資に意欲を示してきた。
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