月探査機SLIM:月面ドッグラン撮影を完了!
Lunar probe SLIM: Completed lunar dog run photography!
月球探測器SLIM:完成月球狗跑攝影!
・13カ所、333枚のフルスキャン画像を地球送信
・月と地球のカンラン石を比較、月の起源調査へ
JAXA研究所掲載記事からSummaryをお届けします。
宇宙科学研究所:会津大学:立命館大学
SLIMのマルチバンド分光カメラ(MBC)が 10バンド分光撮像に成功した。
SLIM観測画像を公開:
JAXAが、’SLIMの電力回復後の観測画像’を一部公開した。
当初期待していたより、多くの岩石を観測できた。
SLIM搭載MBCの画像(図1-1)
着陸直後のドッグランエリア(月面スキャン撮像のモザイク画像)
SLIM搭載MBCの画像(図1-2)
電力回復直後のドッグランエリア(モザイク画像)
太陽の方向が逆転し、東から西に変わった。
そのため、2つの画像で、影の射す方角が異なる。
10バンド詳細観測した岩石(図2)
日射条件が異なったために、観測対象の岩石を一部変更および追加した。
’あきたいぬ’を観測(図3)
電力回復後に、’あきたいぬ’を、近赤外線(波長1.65μm)で観測。
MBCのオートフォーカス機能:
フォーカスをあわせることで距離を測定できる。
距離がわかると、岩石の大きさも計算することができる。
’あきたいぬ’までの距離は18m、横幅は63cmであることが判明。
SLIMチームとMBCチーム(図4)
MBCでの観測を完遂:
1.SLIM電力回復後、フルスキャン画像333枚を波長を変えて、2回撮影。
2.岩石やレゴリスの高解像度10バンド観測を、13カ所で実施。
データをもとに、岩石の判別と鉱物の化学組成の解析を進める。
科学的成果が得られ次第、発表する。
https://www.isas.jaxa.jp/topics/003674.html
月の起源調査 :月と地球のカンラン石を比較
SLIMが、’重力天体への高精度着陸’に成功した。
ISAS/JAXA は、月の起源の調査を開始する。
SLIM: (Smart Lander for Investigating Moon)
将来の月惑星探査に必要な’高精度着陸’を、SLIMが実証。
SLIMの実現で、’月よりも重量制約の厳しい惑星への着陸’も現実になる。
月面からのサンプルリターン:
また、将来月面からのサンプルリターンを実施する場合。
1.月面からSLIM級のリターン機を打ち上げれば、
2.’はやぶさ’のカプセルを、地球に送ることができる。
月の形成と進化の謎を解く:
月は’ジャイアントインパクトで形成された’とする説がある。
この場合、マントル組成(=月の90%)は、地球と似た組成となる。
1.マントルは月内部の物質である。
2.月面で、マントル組成を直接調べるのは難しい。
3.マントルが、’月表面に露出した場所を調べること’が重要。
ピンポイント着陸の重要性:
クレーター近くには、’マントル由来と考えられる物質’が露出している。
SLIMは、クレーター付近にピンポイント着陸し、その場観測した。
クレーター内部および周辺:
隕石衝突により掘削されたクレーター内部および周辺。
’月内部物質が露出したと考えられる場所’が存在する。
月周回衛星「かぐや」が重要な発見:
月周回衛星「かぐや」の重要な発見の一つ。
月表面に’マントル由来と考えられる物質が露出している場所’を発見した。
月と地球のカンラン石を比較:
具体的には「カンラン石」と呼ばれるマントル物質を含んだ岩がある。
カンラン石とは:
原始の月が、まだ熱を持ち溶けている時代。
比重が大きく月マントル内部に沈んでしまった物質(参照図)
カンラン石の組成を地球のものと比較し、月の形成と進化の謎に迫る。
Multi-Band Camera:MBCの重要性
SLIMは、カンラン石の組成を調べるのだ。
そのためにMulti-Band Camera:MBCを搭載した。
MBCの機能:
1.月面における太陽光の反射光を分光し(=虹色のように分け)
2.それぞれの波長での、光の強さを調べる
今後、カンラン石の組成を決定することを目指す。