中国の367都市:老齢化ランキングを徹底調査
367 cities in China: Thorough investigation of aging ranking
中國367個城市:老化排名深入調查
ー中国の185都市が、’高齢社会に該当すること’が判明
ー中国の150都市で、’人口が減少していること’が判明
ー経済失速で、’不都合なデータの公表停止’相次ぐ
NHKスペシャル放映記事からSummaryをお届けします。
中国国家統計局発表の統計データ:
NHK取材班は、中国国家統計局の統計データを調べてみた。
中国は景気回復の勢いが鈍化。若者の間で雇用不安が広がった。
2018年から発表されてきた年齢別の失業率。都市部16~24歳の失業率が、今年6月に過去最悪を記録。
年齢層別失業率の公表中止:
国家統計局は8月、’年齢層別の失業率について、より正確に実態を反映したい’と言い訳した。
当面、’年齢層別の失業率の公表を停止する’と表明した。
7月分から、’重要データの非公表状態’が続いている。
NHKが真実を徹底調査:
統計データは、経済動向をみる上で欠かせない。
中国で、中国に不都合な国家統計データの更新が止まった。
実際に、どのくらいの数が止まっているのか? 今回、番組取材班が徹底調査した。
不都合なデータ公表を停止:
習近平氏が国家主席に就任した2013年以降、さまざまなデータの更新が止まっていることが判明。
NHK独自検証でいろいろな問題点が見えてきた。
中国統計データの実態とは?
(中国“経済失速”の真実 取材班)
都市部の可処分所得も公表中止:
’都市部ひとり当たりの可処分所得’は、中国の格差拡大の指標データだ。
1985年から、’収入が最上位層の10%’と’収入が最下位層の10%’を公表してきた。
2012年から、両方ともストップの状態が続く。
※注 収入5分位(20%ごと)でのひとり当たり可処分所得データについては、発表が続いている
NHKがCEICデータベースで独自調査:
中国国家統計局のデータ:
中国の統計データを収録しているデータベースCEICを使って調べた。
いったい、公表停止のデータはどれくらいあるのか?
CEICデータベースとは:
中国経済専門家が研究に使用している。
China Premium Databaseは、中国中央・地方政府が発表したデータを82万件収録。
CEICで、年ごとにどれだけのデータが確認できるか?
CEICには「開始年」と「終了年」が記されている。
CEICでの年次公表データ件数:
今回、下記の条件のもとでデータの件数を調べてみた。
【条件】 CEIC China Premium Database
1 データソースが「中国 国家統計局」である
2「年次」データである
3「5年分以上データがある」
これら3つの条件を満たすデータは、全部で9万1636件あった。
公表データの件数を、年ごとの棒グラフにしてみた。
最も多いのは、2008年の8万4178件だった。
2008年以降の公表件数:
1.2010年、中国は日本を抜いてGDPが世界第2位になった。
2.その頃を境に、中国統計データの公表数が少なくなった。
特に、習近平氏が国家主席に就任した2013年。
3.2013年の公表件数が、前年比で1万件も減少。
4.2021年の公表件数も、最多の2008年に比べ、4割以上も減少。
地方都市のデータを分析:
続いて私たちは、地方財政について分析した。
「省と直轄地・自治区」単位以外に、細かく調査した。
300を超える「地級市(都市)」単位の経済関連データを調査した。
「人口」データの入手が困難:
入手が困難だったのが「人口」に関するデータだ。
各都市の統計年鑑は、インターネットで公開されている。
しかし年齢別や職業別など、詳細人口データがない。
「国勢調査」で集計:
そこで専門家に取材を重ね、「国勢調査」を手に入れた。
中国で10年に1度の国勢調査:
国勢調査は、中国の詳細人口を把握できる(推計ではない)唯一のデータだ。
2010年、2020年の集計結果はインターネット上で公開されていない。
「国勢調査」資料から、直接読み解いた。
「国勢調査」で高齢化率を計算:
2010年と2020年の国勢調査人口資料 は、それぞれ1000ページの量だ。
しかし、「国勢調査」資料はデータ化されていない。
360を越える都市について、手入力した。そして’5歳ごとの年齢別人口’を表計算ソフトにまとめた。
NHKは「高齢化」に注目:
「高齢化社会」とは:
一般的に人口に占める高齢者割合が、7%になると「高齢化社会」
「高齢社会」とは:
人口に占める高齢者割合が 、14%になると「高齢社会」
各都市男女・5歳ずつの人口データを、細かい居住地区ごとに調べた。
2020年の「高齢化社会」:
2020年、367都市中185都市が、中国の「高齢化社会」に該当する。
「高齢社会」には、155都市が該当することが判明した。
高齢化率が高い都市のトップ10は、図の通り。
10位の眉山市でも、20%を超えていた。
2010年の「高齢化社会」:
2010年の調査結果では:
「高齢化社会」は293都市中で、「高齢社会」は3都市のみだった。
その後の10年で、中国の「高齢社会」都市は50倍に増えた。
’急速に高齢化が進む中国の実態’が判明した。
人口減少を都市レベルで調査:
中国が直面しているのは高齢化だけではない。
今年1月、中国で’61年ぶりの人口減少’が発表された。
2022年末人口は14億1175万人で、前年と比べて85万人減少した。
150の都市で、人口が減少:
人口減少についても、より細かく都市レベルで調べてみたらどうなるのか?
2010年の国勢調査の値を基準(100)として計算した。
2020年、全体の4割を超える150の都市で、人口が減少していたことが判明。
特に変化が大きかった都市は、図の通り。
黒竜江省、全市で人口減少
黒竜江省は、全市で人口減少進み「高齢社会」になっていた。
チチハルは高齢化率が約16%、10年間の人口減少率は24%にのぼる。
黒竜江省全体で、社会保障費が10年前と比べて3.4倍に増加した。
積立金もすでに底をついた模様だ。
中国統計情報入手は極めて困難:
’経済失速が叫ばれる中国の実態’に迫るため、今回統計データを調べた。
しかし、’中国統計情報を簡単には入手できない’という現実に直面。
我々は、統計年鑑や書籍を活用してデータ集積した。
今後も引き続き、中国経済の実態を注視していく。
(11月5日「NHKスペシャル」で放送)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231117/k10014258651000.html