腎臓病の治療:iPSから腎臓の主要細胞を作製
Kidney disease: Generating main kidney cells from iPS
腎臟疾病的治療:利用 iPS 生成主要腎細胞
・腎臓のもとになる3種の細胞を作製
・腎不全のiPS創薬を実現へ
– 日本経済新聞掲載記事からSummaryをお届けします。
京都大学iPS細胞研究所:
⻑船健二教授:辻本啓共同研究員
1月18日、iPS細胞から腎臓の細胞の一種を作ることに成功した。
’腎臓のもとになる主な3種の細胞’を、全て作れるようになった。
様々な薬剤の治療効果を試すのに活用する。
腎臓病の治療薬開発につなげる。
腎臓細胞とiPS細胞:
腎臓の働き:
腎臓には血液をろ過して尿をつくる。
酸素を運ぶ赤血球の量を調整する働きがある。
腎臓の構造:
尿をつくる組織のネフロンや、尿を排出する尿管。
これらの間をつなぐ細胞などからなる。
「腎間質前駆細胞」を作製
iPS細胞は、身体の様々な細胞に変化できる「万能細胞」の一つ。
今回、研究チームはをiPS細胞から作った。
腎間質前駆細胞は、腎臓のもとになる細胞の一つ。
「ネフロン前駆細胞」を作製
’既にiPS細胞から作り出せていたネフロン前駆細胞’の作製方法を、改良した。
ネフロン前駆細胞と腎間質前駆細胞は、その成長過程が似ている。
主な3種の細胞を作製:
尿を排出する組織のもとになる’尿管芽細胞’と合わせる。
腎臓のもとになる主な3種の細胞をつくれるようになった。
iPS細胞から実際の腎臓に近い構造を再現しやすくなる。
腎エリスロポエチン(EPO)産生細胞を作製:
腎間質前駆細胞から、腎エリスロポエチン(EPO)産生細胞を作ることにも成功した。
腎EPO産生細胞は、赤血球の量の調節に関わる。
この細胞は腎不全につながる線維化に関わるとみられている。
腎不全の防止薬剤を開発へ:
チームは今後、線維化を抑える薬剤を開発する。
腎EPO産生細胞を大量に作製し、様々な薬剤を試す。
治療効果が期待できる薬剤を、短期間で見つけ出せる。
iPS細胞から作った体の様々な細胞に薬剤候補を試す。
「iPS創薬」の可能性
腎臓の立体構造につき、部分的再現を目指す。
腎臓の機能をより詳細に解析できる。
中長期的にはiPS細胞を使う。
ブタの体内で、’移植用のヒトの腎臓を作る研究’を、後押しできる。
1月18日、研究成果論文が米科学誌セル・リポーツに掲載された。
iPS細胞の産業応用:
大別すると、以下の通り。
①組織や臓器の再生医療としての活用、
②がん免疫細胞療法における細胞ソースとしての活用、
③創薬における薬剤探索への活用、
現在、③が最も実用化している分野である。
複雑な細胞を再現
腎臓のような複雑な細胞を再現できる。
’③で創薬の可能性を広げる’という大きな意義がある。