電磁レールガン:ATLAが、欧州ISLを積極支援へ
Railgun technology:Japan ATLA to join European research project
電磁軌道炮:ATLA積極支援歐洲ISL
・ATLAが、ISLの電磁レールガン研究開発を支援
・ATLA・ISLは、共同開発で技術的優位性を確保
Naval News掲載記事からSummaryをお届けします。
独仏研究所:サン・ルイ(ISL):
4月中旬、ATLA代表団がISLを訪問、レールガン技術・研究開発につき協議した。
日本のATLA:
現在、ISLと’電磁砲技術協力の合意’に向けて、準備中。
この記事は、今田義弘、ネイサン・ゲイン、ザビエル・ヴァヴァスールの寄稿による。
ISL が公式発表:
日独仏・国防省は、このプロジェクトに関し、 昨年 5 月 30 日に署名済み。
1.「レールガン技術調査」を目的に、業務委託条件 (TOR)を整理
2.日独仏のレールガン技術研究・開発・テストにつき協力体制
ATLAとISLの協力協定:Q&A
Naval Newsが、ATLAとISL代表者に、ビデオインタビューした。
協定の目的、内容、期待される成果について、可能な限り情報を提供願いたい?
ATLAは、Naval Newsの質問に次のように回答した。
ATLAの回答:
あくまで、今回締結した実施ガイドラインに基づく協力である。
1.参加機関同士で、’レールガン技術情報や、意見交換すること’が目的だ。
2.レールガン技術研究、開発、試験、評価面で、協力可能性を探る。
この実施ガイドラインを活用し、レールガン早期実用化に向け着実に取り組む。
質問 1.
Naval Newsの質問:
ATLA 関係者が、欧州レールガン開発の拠点 ISL (サンルイ研究所) を訪問した。
最近の合意を含め、ATLA はレールガン研究’について、どう考えているのか?
1.欧州の ’THEMA プロジェクトへの影響’はあるのか?
2.日本とヨーロッパの相乗効果を生み出せるのか?
ATLAの回答:
日本のATLA は、欧州 THEMA プロジェクトに参加していない。
だから、THEMAプロジェクトへの影響について、コメントすることは無理だ。
ただし、この実施ガイドラインに基づく協力により、
日独仏が協議することが、’レールガンの早期実用化に貢献すること’を期待する。
質問2:
Naval Newsの質問:
日欧国際協力は、現在の電磁レールガン開発にどのような影響を与えるか?
ATLAの回答:
日欧を取り巻く安全保障環境は、厳しさを増している。
1. 日欧は、電磁レールガン早期実用化に向け、着実に取り組みたい。
2. 同盟国や志を同じ国と協力して、技術的優位性を確保したい。
日本のレールガン開発の経緯:
1.2016年、ATLAは独自にレールガン開発プログラムを開始した。
2.2018年、ATLAは最初のレールガン発射試験に成功した。
重要な節目は、2023年10月:
ATLAが、レールガンの公式艦上発射試験を初めて実施した。
防衛装備庁(ATLA):地上システム研究センター(GSRC):
ATLAは、GSRCで電磁レールガン開発を行っている。
1.ATLAは2016年にレールガンの本格的な開発を開始。
2.2016年度から2022年度まで、電磁加速システム研究を実施。
3.この研究目標は、銃口速度2000m/秒、かつ銃身寿命は120発。
つまり、’一定の銃口速度で、120発を安定発射すること’を目指した。
従来の大砲の場合:
銃身が損傷:
1.火薬爆発の圧力で、損傷が発生し大問題となる。
2.電磁レールガンの場合、この損傷は発生しない。
レールガンの場合:
レールの大電流による熱や、アーマチュアとレール接触による摩耗・損傷が問題だ。
レールが損傷した場合:
1.銃口速度低下など、レールガンの性能低下につながる。
2.そのため、当初は砲身レール材質として銅を使用した。
研究が進歩し、現在は異なる金属や他の材料の混合を採用している。
ATLA:金属と他材料を混合:
ATLAは、新金属の開発により、’120発の連射後でも、砲身レールが発生しないこと’を確認した。
2022年から2026年の新研究目標:
現在、ATLAのプロジェクトは「将来レールガンの研究」に移行した。
1.これまでは、’レールガンから弾丸を発射すること’に、焦点を当てた。
2.今回の研究では、この研究を「銃システム」へ発展させることを目指す。
3.実際の運用に向けた一連の機構を備える(以下のとおり)
・電磁レールガンの弾丸連続発射
・電磁レールガンの射撃管制システム
・発射後の弾丸の安定性確保
欧州の電磁レールガン開発:
独仏のサンルイ研究所 (ISL) が中心。
2020 年 5 月、欧州防衛庁 (EDA) が PILUM プロジェクトを開始した。
1.電磁レールガン (EMRG) の実現可能性を示す。
2.最大 200 km 、スタンドオフ向け砲兵用兵器。
3.電磁レールガンは、ローレンツ力で高エネルギー発射装置。
4.従来の化学銃よりも、大幅に高い初速度を得る。
欧州 5 か国から、 9 つのパートナーがコンソーシアムに参加した。
PILUM プロジェクト: Projectiles for Increased Long-range effects Using Electro-Magnetic railgun:
高度な科学的専門知識を有する研究機関だ。
ISL、サン・ルイのフランス・ドイツ研究所が、プロジェクトのコーディネーター。
1.フォン・カルマン研究所 (ベルギー):流体力学と推進の専門機関
2.2 つのシステム インテグレーター: Naval Group 、 Nexter Systems (フランス)
3.2 つの弾薬サプライヤー: Diehl Defence (ドイツ) 、 Nexter Munitions (フランス)
4.Explomet (ポーランド):金属爆発被覆を専門とする企業
5.ICAR (イタリア):高密度電気コンデンサーの製造企業
6.欧州共同プロジェクト管理が専門機関: Erdyn Consultants (フランス)
PILUM チーム:
最終段階で、EMRG システムの 開発と、海軍・陸軍統合シナリオ作成に重点を置いた。
1.PILUM チームは、一連の数値解析シミュレーション演習を実施。
2.3 つのサブシステムそについて、室内・屋外実験を実施。
「結果は良好だ」と ISL は述べている。
PILUM 提案の仕様とは:
1.PILUM 仕様は、電磁レールガンの ニーズに応じ、パワーと照準仕様を個別提示し、詳細設計で使う。
2.PILUM により、マッハ 6 に到達できる超高速弾の仕様も開発中。
現段階で、風洞テスト、計算流体力学、マッハ 5 での自由飛行テストを完了した。
高温・摩擦問題解決が一番重要:
1.電磁レールガンの砲身側は、常に高温と摩擦に晒される。
2.耐摩耗コーティングで補うことで、砲身寿命を延ばしたい。
電磁レールガンは、従来の大砲に比べ、200km以上の長射程距離を実現する。
この最初のステップが、2035年までのロードマップの重要な鍵となる。
日本とEU:
この技術開発に注目しているのは、日本とEUだけではない。
世界で多くの国が、電磁レールガンの研究プロジェクトに挑戦中。
米国での開発事例:
米国海軍研究局、
米国海軍・水上戦闘センター・ダルグレン部門、
BAEシステムズが、電磁レールガン開発に挑戦した。
しかし、’これらの取り組みは中止された’と報じられた。
インド(DRDO)、英国(DRA)、ロシア:そして中国:
日本の電磁レールガンが、プロトタイプ・海上テストで成功した唯一の国だ。