苦境のボーイング:NHKがストライキ継続を取材
Boeing in trouble: NHK reports on the continued strike
波音陷入困境:NHK 通報持續罷工
・労組のストライキが、取引先を直撃へ
・ボーイングが抱える根深い課題とは
NHK放送記事からSummaryをお届けします。
2024年9月の四半期決算:
米国航空機メーカー「ボーイング」が苦境に陥った。
日本円で9400億円の最終赤字となり、四半期決算赤字は9期連続だ。
1.業績悪化に拍車をかけたのが、9月中旬からの労働組合ストライキ。
2.会社の賃上案が、組合員の投票で、2度にわたって否決された。
日本企業を含む多くの取引先への影響が懸念される。
ボーイングのストライキの背景:
取材で訪れたのはボーイング主力工場、シアトル郊外のエバレット。
NHKの取材で、ボーイングの根深い経営課題が見えてきた。
従業員の抗議活動:
9月13日、ボーイング労働組合がストライキに踏み切った。
1.10月21日、工場の周りで従業員たちが、プラカードを掲げる。
2.24時間態勢で、ボーイングに抗議活動を続けていた。
労組は賃上内容に不満:
9月上旬、経営側と組合幹部は、4年間で25%の賃上げで暫定合意した。
1.しかし、組合側はもともと40%の賃上げを求めていた。
2.暫定合意に組合側が反発、投票で94%が反対で否決した。
米国政府がストライキを仲介:
10月中旬、会社側は新たな賃上げ提案を、労組に示した。
1.今回の提案では、賃上げ幅が4年間で35%に引き上げ。
2.当初提案で廃止された賞与も、復活するとのこと。
組合員の生活苦:チャズ・バーンファーザー氏(33)
会社提案に賛成だと答えた人は、10人中1人もいない。
労働組合の組合員は、1週間250ドルを生活支援金として支給する。
しかし、それだけでは生活を維持することが難しい。
1.ストライキ開始後から、レストランでアルバイトを開始。
2.週に5日、調理担当として働き、家賃や生活の支払いに充てる。
ボーイング組合員が批判:
前CEOデビッド・カルフーンへの高額報酬支払は、大間違いだ。
前CEOに3300万ドル支払うのに、なぜ従業員に給与を与えないのか?
ストライキが取引先を直撃:
パスファインダー・マニュファクチャリング:
この会社は、ボーイング向けの取引が、売上げの95%を占める。
777型機や767型機向け部品で、1200種類を扱う。
1.しかし、部品は出荷待ちの状態で、在庫が積み上げられた。
2.ストライキが始まって、会社の売り上げは大きく減少。
従業員の大幅削減:デビッド・トレーダーCEO:
1.従業員70人の半数を対象に、出勤を一時的に取りやめた。
2.高校生を10人を雇っているが、仕事がないので学校に帰した。
トレーダーCEOは「ボーイングの再建を信じている」
ボーイングは以前に戻れると思うが、それには時間がかかる。
長期戦に備えていて、自動車ビジネスを拡大しようとしている。
ボーイングと日本企業の関係:
日本企業は、ボーイングに多くの部品を供給している。
1.日本のボーイング・パートナー数は150社にのぼる。
2.アメリカを除くと、日本が最大の供給国だ。
ストライキがさらに長期化する見通しとなった。
777型機や737MAXでは、生産面でさらなる影響が出る。
ボーイングの企業風土:
8月、エンジニア出身のケリー・オルトバーグがCEOに就任した。
1.今年1月、飛行中の旅客機のドアが吹き飛ぶ事故が発生。
2.10月23日発表された決算は、9400億円の最終赤字だ。
その後電話会見で、オルトバーグ氏は危機感を強調した。
オルトバーグCEOの発表:
‘ボーイングの文化を根本から変えなければならない’と述べた。
まずは、ストライキ終結が最優先事項である。
賃上げ提案が再び否決:
1,会見終了して10時間後、4年間35%・賃上げ提案は、再び否決された。
2.反対票は前回94%から64%に減少したが、ストライキは継続される。
S&Pグローバル・レーティング:
ボーイング社債格付けは「投資不適格」の一歩手前だ。
こうした状況を受けて、会社は改善対策を表明した。
1.開発中の次世代機、777Xの納入延期を発表
2.最大250億ドル(3兆8000億円)の資金調達
3.全従業員の10%、1万7000人程度の人員削減
ストライキの影響で、資金調達面でさらなる打撃となる。
エアロダイナミック・アドバイザリー:問題点を指摘
リチャード・アブラフィア マネージングディレクター:
1.しかしボーイングが、20年間歩んできた道のりは破滅的だ。
2.’株主還元を過度に重視した会社の経営方針’が、大問題なのだ。
アブラフィア氏は、2000年代からこの姿勢が強まったと指摘した。
中長期計画や処遇改善が重要:
航空機品質問題の発生は、ボーイング経営陣と生産現場のコミュニケーション不足によるもの。
1.安全や品質を守るための、適切な決定が下されていない。
2.安全や品質を守るための、適切なリソースが提供されていない。
最高幹部の資質の重要性:
ボーイングの最高幹部は、
1.航空機の設計や製造という中核事業の経験を持たない。
2.’資質不足の人材を、最高幹部に任命してきたこと’への代償だ。
ボーイングの経営陣に必要なもの:
レストランでアルバイトをしていたバーンファーザー氏曰く。
1.ボーイング経営陣に必要なのは、従業員への『共感』だ。
2.経営陣は、我々を『ただの労働者』と思っているようだ。
ボーイングは世界中で利用されている。
一度に数百人の乗客を乗せる航空機には、絶対の安全が求められる。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241025/k10014618781000.html